大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和35年(く)10号 決定 1960年3月11日

少年 C

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由の要旨は、少年Cは昭和三五年一月一二日大阪家庭裁判所堺支部において、同裁判所昭和三四年少第七七五号、第一、九六九号恐喝、同未遂、窃盗保護事件について、中等少年院送致決定を受けたのであるが、少年の家庭は申立人父K(五二年)母S子(四六年)弟A(小学校六年)の四人暮しで、申立人は小さな建築請負業をしており、右手負傷の不具者であるため、少年をして帳簿記入等を為さしめ、申立人の職業を継続せしめようと父母共に念願し指導してきたのであり、又少年の不良性を矯正するため昭和三四年一〇月一七日から申立人は創価学会岸和田支部に入会し、同支部長と相談し少年を同会の少年団に入団せしめ、将来特に少年を指導しようとするまでになつていたのであり、同支部長もその決意を明らかにしているし、他方少年の担当保護司岸和田市立中学校教諭木岡元三郎も同様、今後も特に熱心に指導する旨決意を明らかにしている次第であるから、このさい少年を中等少年院に送致する決定は却つて少年の指導に不適当であつて、今一度父母の許に帰すのが適切であると考えられるから原決定は著しく不当であるというのである。記録を調査すると、少年は昭和三三年五月二日大阪家庭裁判所堺支部の決定により大阪保護観察所の保護観察に付されているものであるに拘らず、原決定第一、第二の非行を敢てしたものであり、そして原決定第一の恐喝、同未遂の非行における少年の行動は粗暴悪質であり、同第二の窃盗における少年の行動も積極的であつて、加うるに本窃盗は右第一の非行につき少年が少年法第二五条所定の試験観察に付され又その後に送致された右第一の非行以前の暴行、恐喝等に対する保護事件につき重ねて試験観察に付されて各家庭裁判所調査官の観察を受けていた間の非行であつて、少年自身にはその所為を反省し改善する意欲が全く認められないし、監督者である父母においても少年を盲愛しその気まゝに任せていた感があり、適切な指導監督をした跡は認められない。他方少年は知能低く、性格は怠惰、情緒的にも未熟、人格は未発達であり、又劣等感の補償としての自己顕示的態度や反動形式としての攻撃性が最近積極性を増してきていることが記録上明らかであり、以上の点を総合すると在宅保護によつては所論の点を考慮しても、到底少年の健全な育成を期することができず、従つて少年に対しては少年院において厳格な規律ある訓練を実施することが必要且つ適切であると認められるから、少年を中等少年院に送致することとした原決定はまことに相当である。よつて本件抗告は理由がないから少年法第三三条第一項によりこれを棄却することとし主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小川武夫 裁判官 柳田俊雄 裁判官 坂口公男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例